「ダイエット中だからお肉は控えなきゃ!」
「最近お肉が胃にもたれるから量を減らそうかな……」

などと思ったことないですか? でも、ちょっと待って。食べ方さえ気をつければ大丈夫。むしろ食べた方がいいんです! タンパク質(protein)は私達の身体やエネルギーを作る三大栄養素のひとつ。若々しいカラダづくりには欠かせない栄養素なんですよ。ですが、ただやみくもに肉や魚をたくさん食べればよい、という訳ではないのです。摂り方次第では「毒」になりかねない栄養素でもあるのです。
そこで、今回は当ラボが提案するタンパク質の摂取法、についてです。老化を防ぐちょっとした食べ方のコツ、教えます! 特に40代以上の中高年の方は要チェックですよ。

タンパク質について簡単解説

まずは、タンパク質について大体これだけ知っていればOKなこと、以下にまとめます。

  • タンパク質は三大栄養素の一つ。身体(細胞)を作り、エネルギー供給する役割をもちます。
  • 約20種類のアミノ酸で出来ており、そのうち9種類は人間の身体でつくることが出来ず食事から補う必要があるため「必須アミノ酸」と呼ばれています
  • カラダの20%を占め、水に続いて多い物質です
  • 体内で常に分解や合成を繰り返し、カラダのあらゆる組織を作っています
  • おもな供給源は、肉、魚介、大豆、卵、牛乳など

英語「プロテイン」の語源はギリシャ語の「第一のもの」なんです。筋肉や臓器などカラダを構成するもっとも重要な成分だからなのでしょうね。目も鼻も口も、髪も爪も肌も骨も、血液もホルモンも遺伝子も……、いってみれば私達の身体のほぼ全てが、タンパク質で出来ているのです。成長ホルモンを作るのもタンパク質。髪や肌を美しくするのもタンパク質。骨を丈夫にするのもタンパク質です。

40歳を過ぎたらタンパク質を意識して摂るべき

ところが、年を取るごとにタンパク質は不足しがちになります。食の嗜好が変わり、食べる量も減ってくる。さらに消化吸収力も徐々に低下していくために、タンパク質を体に取り入れにくくなる傾向があるんですね。タンパク質が足りないと新陳代謝が悪くなり、体力や免疫力も低下、血管も弱くなり脳の働きも鈍ってしまいます。
筋肉は20歳をピークに減り始め、80歳までに約40%が減少するといわれています。女性はホルモンの低下により骨のカルシウム保持力が弱まって骨密度が低下し、運動器に支障が出始めることもあります。なので、タンパク質は中高年になったら若い時以上に意識して摂るべき栄養素なのです。

中高年のうちから、フレイル対策!

年をとったり病気を患うなどして筋肉量が減り、全身の筋力が低下した状態をサルコペニアと呼び、転倒・骨折を招いたり、認知症になるリスクが高まると指摘されています。このサルコペニアは、40代、50代でも、ダイエットを長く続けている人や、運動不足な上に食が細い人はその予備軍となっている可能性があるといいます。筋肉が減っていくと身体機能が低下し、活力がなくなり、さらにエネルギー消費量が低下する……。負のスパイラルに陥ってしまうようです。昨今、高齢者が寝たきりになる寸前の状態を「フレイル(虚弱)」と呼び、その予防についての注目が集まっていますが、その第一の原因は、タンパク質不足による低栄養であるといわれています。
メタボやダイエットを気にして肉を敬遠したり、食事量を減らしたりしている人もいるかもしれません。ですが、人生100年を見据えて、いつまでも若々しく活力みなぎる毎日を過ごすためには、中高年のうちから低栄養には注意し、フレイル対策を意識しておきましょう。

タンパク質の摂取は「消化力」がカギ。

「じゃあ、肉をどんどん食べよう!」と思うのは早合点。タンパク質は同時に摂り方をよく考えることが大切です。

タンパク質は、糖質や脂質とは違いエネルギー源として体内にためておく仕組みがなく、過剰分は尿へ排泄されます。そのため、摂りすぎは腎臓に負担をかけ、腎機能障害を招く恐れがあります。
食べたものが栄養として体内で利用されるには、適切な消化吸収の過程が不可欠ですが、タンパク質も言うに及ばず。消化が不十分で「未消化」の状態のまま腸に降りていくと、困ったことを招きます。未消化のタンパク質は腸内に住むいわゆる「悪玉菌」のエサとなり、そこで「腐敗」します。腸内で腐敗するとアンモニアが生成されます。これはアミン類とか窒素化合物などともいわれる毒素です。つまり、消化不十分なタンパク質は腸内で毒素を生む元凶となるわけです。

この状態が続くと、腸は炎症をおこし粘膜に傷がついてすき間が生まれ、リーキーガット(腸漏れ症候群)の状態を招く恐れがあります。そうなると、本来であれば腸壁から吸収されるはずのない食べカスや、ウイルスや細菌、重金属といった異物が血液の中に取り込まれることになり、これがアレルギーや自己免疫疾患、糖尿病、肥満の原因になるともいわれています。
タンパク質は不足させていけない、しかし一方で、摂りすぎや消化不足に陥ると体内に吸収されないばかりか、人間にとって様々な病気や不調の原因になりかねない、という訳なのです。

タンパク質の摂り方 アドバイス!

では、タンパク質の必要性と注意すべき点について提案したところで、当ラボから「タンパク質の理想の摂り方」を解説してみたいと思います。

摂取量について

1日あたり体重×1.2~1.5gを目安に!

一般的に1日に必要なタンパク質の量は、最低体重1㎏あたり1gと言われています。60㎏の成人なら60gということになります。しかし、高齢になると「タンパク質同化抵抗性」といって、体内での利用効率が落ちてくるので、より若々しいカラダづくりやフレイル予防のためには、体重1㎏あたり、1.2~1.5kgが良いといわれています。(体重60㎏で1日70~90g)

体重(   )kg × 1.2~1.5 = タンパク質(  )g/日
出典)「東大が調べてわかった衰えない人の生活習慣」飯島勝也著(KADOKAWA)

ただし、肉や魚にはタンパク質以外も含まれているため、ステーキを100g食べたからと言って、100gのタンパク質が取れる訳ではありません。いくつかの食材を組み合わせて摂る必要があります。例えば、体重50kgぐらいの人は、1日に牛ひれ肉100g、鶏ささみ100g、カジキマグロ100gぐらいを食べるのがベスト!(※それぞれ20g程度のタンパク質が含まれます)また、タンパク質は体内に溜めておくことはできないため、一度に大量に食べるのでなく、毎食こまめに摂るようにしてください。

※タンパク質は肉や魚以外にも、穀類や野菜類、豆類にも含まれているので、色々な食材からバランスよく摂るようにしましょう。どの食材にどれだけ含まれているのか、以下のサイトを参考にしてください。(別ウインドウで開きます)

食べ方の注意点

胃でしっかり消化。十分に咀嚼し、食事中にがぶ飲みしない

タンパク質は胃の中で「ペプシン」というタンパク質分解酵素により、消化がスタートします。このペプシンは、胃液に含まれるペプシノーゲンに胃酸が反応することによりつくられます。そのため、タンパク質の消化は、第一に「胃酸」が正常に分泌されているかどうか、がカギとなります。胃酸はまず、食べ物を見たり臭いを嗅いだりすることで作られる脳内神経伝達物質によって分泌がスタートします。そして十分な咀嚼によってさらに分泌が促進されます。そのため、五感をつかって食欲を喚起させ、食事に集中してよく噛んで食べることが大切です。また、食事中に水やお茶をガブ飲みするといった胃酸を中和するようなことはNGです。胃の中で十分な消化が出来ないと、続く腸内で悪影響を招きかねません。

※胃酸について詳しくは以下の記事をご覧ください。胃酸セルフチェック法の解説もあります。

同時に食べるべきもの

食物繊維、発酵食品も追加!腸内で腐敗を防ぐ

タンパク質を多く摂ろうとすると、どうしても肉食に偏りがちに。すると食物繊維が不足します。(肉には食物繊維が全く含まれていません)
食物繊維の不足は、腸の蠕動運動を滞らせ便秘を招くと同時に、悪玉菌優位な環境をつくります。肉を食べる時には、野菜や海藻のサラダもしっかり食べるなど、食物繊維を同時に摂ることを意識しましょう。食物繊維は水分を含んで膨れ上がり、老廃物や毒素をからめとって、便としてカラダの外へ排出してくれる強い味方です。また、味噌や納豆、キムチ、漬物などに代表される発酵食品を積極的に食べ、腸内フローラを善玉菌優位な状態にすることを心がけましょう。腸内の善玉菌はタンパク質の代謝に必要なビタミンB6をつくりますので、体内での利用効率を高めてくれます。

まとめ

タンパク質は老若男女問わず、欠かせない栄養素ですが、中高年以降に不足すると「老化」を加速させる要因になります。特に40代以降になったら、その特質をしってタンパク質が上手に体内で利用されるようにしていきたいものです。そのカギは「消化力」にあり! とにかく、タンパク質を摂る時は腸内での腐敗をおこさないよう気を付けること。そのためには、日頃から自らの消化力を意識して「未消化」の状態を防ぐようにすることが肝心です。何を食べるかも大事ですが、それ以上に「どのように食べるか」を意識した食習慣を実践してください。
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参考文献
「東大が調べてわかった衰えない人の生活習慣」飯島勝也著(KADOKAWA)
「栄養の基本がわかる図解事典」中村丁次監修(成美堂)
「腸内酵素力でボケもがんも寄り付かない」高畑宗明著(講談社)