あなたは食事をする時、「胃酸」を意識していますか?

そう聞かれて「yes」と答える人は1割にも満たないのではないでしょうか。
かくいう私もその一人でした。健康になるには、手っ取り早く「食ベもの」を変えればいいのでは、と思っていました。しかしどんなにカラダに良いモノを食べても、「胃酸」がしっかり分泌できないカラダでは全く意味がないどころか、不調やパフォーマンス低下を引きおこす大きな原因となります。消化力を知るうえで、「胃酸」は最重要トピックです。今回は、まずは皆さんに胃酸の役割胃酸不足のリスクについて解説していきます。

胃酸

胃酸は、食べものを消化するために胃粘膜から分泌される「胃液」の中の成分で、口から入ってきた食物の消化と、細菌やウィルスなどの殺菌を行っています。胃液は1回の食事で通常0.5~0.7リットル、1日に約1.5~2リットル分泌されます。

<胃液の主な成分>
粘液 胃壁を保護し、消化をスムーズにする
胃酸 強い酸性である塩酸が主成分。
ペプシノーゲン たんぱく質消化酵素ペプシンのもとになる物質

よく「胃酸」と「胃液」はどう違うの?と混同しがちなのですが、胃酸は胃液(消化液)に含まれる成分なんですね。

胃酸の役割について

出典:WHY STOMACH ACID IS GOOD FOR YOU (Jonathan V.Wright,M.D. and Lane Lenard,Ph.D.)

では、続いて胃酸の役割についてみていきましょう。
胃酸はPHが1~1.5という非常に強い酸性の物質です。この強酸性の胃酸によって食べものを細かく溶かしたり、殺菌して有害物質の侵入を防いだりしています。この胃酸があるから人は食べたモノを消化できることはもちろん、微生物や細菌に侵されずに安心して食べられるのです。
また、胃酸には胃から分泌されたペプシノーゲンに作用し、「ペプシン」に変える働きがあります。このペプシンはタンパク質を分解する消化酵素で、胃での消化の重要な働きを担っています。ペプシノーゲンがペプシンに変わるためには、胃酸が正常に分泌され、胃の中が十分な酸度(PH3以下)に保たれていることが条件です。

胃酸の役割
1.食物の消化分解
2.口から入ってきた細菌やウィルスの殺菌/除菌

さて、こんな強酸性の胃酸が出ていて、胃は何故溶けてしまわないのか?と疑問を思われる方もいらっしゃるでしょう。それは、胃の壁が「胃粘液」で覆われているからなんですね。この粘液にはアルカリ性の炭酸水素ナトリウムが含まれており、胃酸と混ざると中性になるのです。また、非常に強い粘性があり保護成分が粘液に留まることで、酸によるダメージを防ぐバリアになっています。

胃酸がでないと起こること

続いて、代表的な「胃酸不足によるリスク」について解説していきます。

1.三大栄養素の吸収不全

三大栄養素とは炭水化物、タンパク質、脂質のことです。ものすごく単純に言うと、三大栄養素は私たちが生きていくための「エネルギーのもと」です。胃酸不足によって食べものが細かく分解できないと、続く腸での吸収不良を招きます。
三大栄養素が十分に吸収できないと、だるい、活気がなくなる、そして免疫の低下などを招き、生命活動を営むのは非常に困難になります。

2.ビタミン・ミネラルの吸収不全

同じく重要な栄養素であるビタミンやミネラル。これらの微量栄養素は三大栄養素がしっかり消化されてはじめて吸収可能になります。すべての生体反応に酵素が関わっていますが、酵素はビタミンとミネラルを必要とします。したがって、これらが不足すれば様々な生体反応が滞り、正常な生命活動ができなくなってしまいます。また、貧血や肌荒れ、ホルモンバランスの乱れ、慢性疲労などの症状が現れています。胃酸不足は美容にとっても大敵なのです。

3.腸内環境の悪化

胃酸不足による消化不良によって、食べものが「未消化の状態」のまま腸に降りていくことで、様々な悪影響があります。

3-1.腸内悪玉菌の増殖

未消化のタンパク質が腐敗し毒素が発生するとともに悪玉菌が増殖し、便秘や下痢、腹部膨満、ガス悪臭、逆流性食道炎といった不快症状を招きます。また近年、小腸内に悪玉菌が異常繁殖する病態をSIBO(シーボ)といい、様々なお腹の不調の元凶として注目されています。これは、未消化物が小腸に滞留してしまうことで、本来なら大腸にいるはずのバクテリアが小腸でも繁殖できる環境が整ってしまうためと考えられています。

3-2.腸の炎症

分子の大きいゴロゴロとした未消化物が、繰り返し繰り返し腸に触れ続けると腸はダメージを受け、炎症が起こります。すると、腸の粘膜に傷がついて穴が開いたような状態になり、そこからウイルスや細菌、重金属、化学物質、食べカスといった異物が侵入してしまうLGS(リーキーガット症候群)になる恐れがあります。LGSになると、ちょっとしたカラダの不調から、食物性アレルギーやリウマチなどの自己免疫疾患、化学物質過敏症、うつや自閉症、認知症など精神疾患なども招くといわれています。

まずは自分を知ることから

いかがでしょう。冒頭で述べた通り、どんなにカラダに良いモノを食べても、「胃酸」がしっかり分泌できないカラダでは全く意味がないどころか、不調やパフォーマンス低下を引きおこす、という意味が理解できたのではないでしょうか。

胃酸分泌チェック(ホームテスト)

では、いったい自分は胃酸分泌は正常に行われているか?
自宅でカンタンに調べる方法があるのです。ここでは1つ、「レモン水」を使ったセルチェックとお伝えします。

[レモン水チェック]
1、生のレモンを絞り果汁液をコップに入れ、水で10倍に薄める
2、夕食時に食事を食べながら以下のように飲む
1口食べたら1口飲む。これをレモン水がなくなるまで繰り返す
【判 定】
*食後2-3時間後に胃が重く、不快感を覚えた方
胃酸の分泌はある程度十分でしょう。
*食後2-3時間後、いつもよりスッキリした感じを覚えたり、空腹感を感じた方
胃酸の分泌が足りないと思われます。

もし、このテストを試されて、胃酸の分泌が少ないと感じられた場合は、このレモン水で胃酸の働きを補いながら食事をするのをおススメします。いつもより食事がすっきり食べられるとともに、栄養吸収が向上することで活力を感じられるようになるでしょう。

セルフケアをする上では、自分の体内環境を知る「ものさし」を持ち、カラダの声を聞くことがとても大切です。今回は「胃酸」という消化力に欠かせないトピックを取り上げました。これから食事をする時は是非、「胃酸」を意識してみてください。

消化力の総合的なセルフケアの要点については、無料PDF「消化力を高める5つの秘訣」にまとめました。ご興味ある方は参考になさってください。